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日本の教育格差の原因や現状は?学校や教員ができる取り組みも紹介

日本の教育格差の原因や現状は?
学校や教員ができる取り組みも紹介


教育格差の問題は日本においても大いに注目されています。受けることができる教育に差があるのは、子どもの学力だけでなく、子どもの将来にも影響するため、教育の不平等は一刻も早く是正しなければなりません。

また、一方でICTの活用と現場の努力、地域との連携等によって、学力だけではなく非認知能力などの本質的な育成にいよいよ取り組める社会状況になってきています。

本記事では教育格差の現状、学校や教員など教育現場でできること、実際の取り組み事例などを紹介します。


教育格差とは

教育格差とは、生まれ育った環境により教育機会に不平等が生じる状態を指します。教育において格差が存在することは、子どもの時期だけでなく大人になってからも様々な不平等を引き起こすため、深刻な社会問題として注目されています。

この問題に対処するためには、経済的なサポートや地域ごとの教育資源の均等化など、多角的なアプローチが必要です。


教育格差の定義

教育格差の定義は、子どもが変更できない初期条件である親の学歴、世帯収入、職業などの社会的、経済的、文化的な要素を統合した「社会経済的地位(Socioeconomic status, SES)」や出身地域といった「生まれ」によって、学力や最終学歴などの教育成果に差が生じる状態とされています。

子どもが持っている学習能力や努力とは無関係に、家庭環境や社会的背景によって形成されます。また、教育格差は単に学歴の差を言うのではなく、さまざまな要因が絡み合って生じる複雑な問題です。

教育に格差が存在していることは、子どもたちの将来や生活の質に大きな影響を及ぼし、社会全体の不平等を拡大する要因となり得ます。


教育格差が生まれる原因

教育格差が生まれる原因は、主に「家庭の経済状況」や「地域による違い」とされています。これらの要因により、子どもたちの学力や学歴に差が生じ、教育格差が拡大していきます。


経済的な格差

家庭の経済状況は、子どもが受けられる教育に大きな影響を与えます。

経済的にゆとりがある家庭では、子どもが学校以外でも教育を受けられるのに対し、経済的に困窮している家庭の子どもは、自宅で勉強する時間や環境がなかったり学校に行けなくなってしまったりと、学びに取り残されることも多いです。

さらに、学べる機会が失われることで、子どもたちは将来的に低所得の仕事に就く可能性が高まり、貧困の連鎖が続くことになります。

また、幼児期に旅行へ行ったり、習い事などさまざまな体験をさせることで「非認知能力」が伸びるといわれています。非認知能力は、コミュニケーション力や忍耐力など数値には表せない能力のことで、教育のなかでも重要な要素のひとつです。

教育格差の問題を解決するためには、まず貧困家庭への経済的サポートが不可欠で、すべての子どもたちが平等な教育を受けられたり、親と一緒にさまざまな経験をして非認知能力を高めることが、教育格差の縮小につながります。


地域による格差

生まれ育つ地域の違いも、教育格差を生み出す要因の一つです。

都市部と地方では、教育を受ける環境に顕著な差が存在します。都市部では教育機関が充実しており、学校設備も整っていることが多いです。また、塾や習い事など学校以外での学び場も豊富にあり、子どもたちが多様な学習経験を積むことができます。

一方、地方では学校の設備が不十分であったり、通学できる学校の数が少なかったりと、地方の子どもたちは教育機会の不足に直面することがあり、学習する環境に大きな差が生じます。

さらに、地方では塾や習い事の選択肢も少ないため、都市部の子どもたちと比べて教育機会の量や質に格差が生じることがあります。

国や地方自治体が積極的な介入や支援などをすることで、地域による教育格差は是正できるでしょう。


日本の教育格差の現状

日本でも教育格差が深刻化しており、格差の現状として以下の点が問題視されています。

・貧困により子どもの学力格差が存在
・貧困家庭の大学進学率は半分以下
・都市部と地方における学習環境の格差
・コロナ禍において格差が拡大

これらの格差は、子どもたちの将来の機会や生活の質に大きな影響を及ぼし、社会全体の不平等を拡大する要因ともなっています。


貧困により子どもの学力格差が存在

教育格差の中で、特に深刻な問題の一つが貧困による子どもの学力格差です。

経済的に困窮する家庭の子どもたちは、学校以外の学習に必要な教材を購入できなかったり、塾に通うことが難しい状況にあります。そのため、学校以外で学習へ取り組む時間が減少し、結果として学力に差がついてしまいます。

さらに、学力の差は子どもの自信を低下させることにもなり、自己肯定感の欠如や自信喪失となることがあります。これにより、子どもたちは学業だけでなく、社会的な活動や将来のキャリアにおいても不利な状況に置かれる可能性が高まるでしょう。

経済的な問題で十分に教育を受けられない子どもたちは、学業成績が低下し、大学進学や良い職業に就く機会が減少します。これは、貧困の連鎖を引き起こし、社会全体の格差を拡大させることにつながります。

教育の格差を解消するには、困窮した家庭の子どもたちに対する経済的サポートや教育を受ける機会の提供が不可欠です。


貧困家庭の大学進学率は半分以下

日本における教育格差の顕著な現れとして、貧困家庭の子どもたちの「大学進学率の低さ」があります。大学進学率の割合は、以下のとおりです。

このような低い進学率は、経済的な格差や学力差が大きく影響しています。

大学進学には入学金や授業料、教材代など様々な費用が必要であり、経済的に困窮する家庭ではこれらの費用を捻出することが困難です。また、学力の差も進学率に影響を与えており、経済的な問題で十分に教育を受けられない子どもたちは、学業成績が低下し、大学進学の可能性が低くなります。

教育格差の解消には、貧困家庭への経済的支援や奨学金制度の充実などが必要です。教育機会の平等を実現するためには、経済的な障壁を取り除き、すべての子どもたちが高等教育を受けられる環境を整える必要があるでしょう。

参考:内閣府「共同参画2019年2月号」


都市部と地方における学習環境の格差

日本における教育格差の一つの側面として、都市部と地方における学習環境の格差が挙げられます。特に首都圏と地方では、教育機会や学習環境に大きな差が存在します。また首都圏以外でも、県庁所在地や人口が比較的集中している都市部では、教育機関が充実しており、学校設備も整っています。

また、人口が集中している都市部では、学校以外での教育機会(塾や習い事)もたくさんあり、子どもたちが多様な学習経験を積むことが可能です。

一方で、地方や過疎地域では、学校の設備が不十分であったり、学校の数が少なかったりするため、子どもたちは教育を受ける機会の不足に直面しています。また、地方では塾や習い事の選択肢が限られており、都市部の子どもたちと比べて教育機会に格差が生じているのが実情です。

さらに、地方や過疎地域では、大学へ進学するための情報や、受験対策ができる場所の選択肢が、少なくなる傾向にあります。

教育機会の平等を実現するためには、地域間の教育資源の均等化や、地方の教育環境の改善が必要です。すべての子どもたちが質の高い教育を受けられる環境を整えることが、教育格差の解消に向けた重要なステップとなります。


コロナ禍において格差が拡大

コロナ禍を通じて、日本では教育格差がさらに拡大する傾向が見られました。特に、インターネットの通信環境やデジタル端末の有無によって、学校のオンライン授業が受けづらい家庭が生じており、経済的にゆとりがある家庭とそうでない家庭との間で、学習環境に大きな差が生じています。

年収の低い家庭では勉強時間の減少が著しく、臨時休校期間中に学校外の勉強時間を増やすことができなかったことが明らかになっています。一方、年収の高い世帯は、臨時休校期間中に学校外の勉強時間を増やし、学校再開後もそれが継続していることが分かっています。

このように、経済状況の良い子どもたちは、学校外での勉強時間を増やすことによって、学校での勉強時間の減少を補っています。

経済的にゆとりがない家庭の子どもたちが、学校の臨時休校中に宿題以外の学習ができていないという現状は、今後の教育支援の方向性を示唆していると言えるでしょう。

また、2020年に開始されたGIGAスクール構想の進みについて、自治体間で格差が生じていることも一因として考えられます。コロナ禍において、GIGAスクール構想が一気に進んだ自治体も少なくありません。


まとめ:教育格差の是正には教育現場の改革も必要

教育格差の是正には、教育現場の改革が必要です。本記事で紹介したように、1人1台の端末配布や家庭におけるネットワークの補助、端末を自宅に持ち帰ることによる家庭学習など、一人ひとりにあわせた個別最適な学びが進められるような環境が作られ始めています。

一方で自治体によっては、端末を学びにほとんど使っていなかったり管理の課題などから持ち帰りをさせていなかったりするほか、使う機能に制限があるケースなども少なくなく、ここでも教育格差が生じると考えられており、ICTの活用有無が教育格差を解消できるかどうかの大きなポイントとなっています

 

また、教育の多様化が進む中、非認知能力の育成が重要視されています。経済的な格差があるなかでは、非認知能力が十分に発達しない子どもが出てくる可能性があります。

 

学校でも、非認知能力の育成に向けた取り組みが行われ始めています。例えば、共感的なコミュニケーション力を高める活動や、演劇を使った教育を取り入れた学校もあります。

教育のあり方が多様化する中で、特定のキャンパスを持たず、授業は全てオンラインで行う大学も存在します。そこの学生は世界の7都市を移動して寮生活を送り、異文化で育った学生同士の交流を重視する教育内容を提供しています。

このような先進的な教育方法も、非認知能力を伸ばすという観点から今まで以上に注目されるようになるでしょう。


【記事監修者】

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。


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