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教育現場のICTとは?メリットや課題、取組事例を紹介

教育現場のICTとは?
メリットや課題、取組事例を紹介


GIGAスクール構想の実現に伴って、教育現場でのICT活用があらためて注目されています。教育にICTを導入することで、教育の質を向上させることが可能です。

教育にICTを活用することのメリットは多いですが、一方で課題や問題点があることも事実です。

今後さらに教育の質を高めていくには、ICTについて理解を深め、効果的に活用することがポイントです。

そこで本記事では、教育現場でICTを使う目的やメリット、ICT化による課題、活用事例などについて解説します。


今あらためて考える教育のICT化

教育のICT化は、今や教育現場における重要な流れとなってきています。

文部科学省が推進するGIGAスクール構想は、ICT化の動きを象徴するもので、新型コロナウイルスの影響により、教育現場におけるICTの必要性が一層高まりました。

また、教育にICTを活用することにより、教育の質の向上、教育格差の解消、そして未来社会におけるデジタルリテラシーの向上を目指しています。

しかし、端末の導入やICT環境の整備だけではなく、教員の研修や授業のデジタル化に向けたカリキュラム開発など、さまざまな課題が残されています。

これらの課題に対する具体的な解決策や、教育現場でのICT活用の実践例を見ていくことも、今後の教育ICT化を進める上での重要なポイントとなるでしょう。


2020年のGIGAスクール構想の背景

スクール・ニューディール構想とGIGAスクール構想は、日本の教育ICT環境を整備する上での重要なマイルストーンですが、その実施においては異なるアプローチが取られています。
スクール・ニューディール構想は2009年に文部科学省によって提唱され、主に学校の耐震化やICT機器の整備に焦点を当てていました。

この構想では、デジタルテレビや電子黒板などの大型提示装置の導入が進められましたが、その後の評価で、教育ICTの全体的なビジョンの欠如や、大型提示装置の活用方法に関する課題が浮き彫りになったという経緯があります。

一方で、GIGAスクール構想は、スクール・ニューディール構想の経験を踏まえ、より包括的なICT環境の整備を目指しています。

2020年に加速度的に推進されたGIGAスクール構想では児童生徒1人に1台端末の配布と、学校内の高速大容量の校内LANの整備が中心となっています。

これにより、全国の小中学校でICTを活用した授業や学校運営が一斉に始まることになり、教育の質の向上と教育格差の解消が期待されています。


コロナ禍によって加速した「1人1台端末」

新型コロナウイルスの影響により、教育現場でのICT活用が急速に進展しました。

GIGAスクール構想は、元々5年の計画で進められる予定でしたが、緊急事態宣言下での学校閉鎖を受け、2020年度内の実現へと前倒しされました。

1人1台の端末がほぼ実現したことにより、教育現場では1人1人の学習状況に応じた個別学習が可能になり、双方向型の授業や多様な意見交換が行えるようになりつつあります。

しかし、新しいICT環境の整備と同時に、教員や生徒が端末の操作に慣れること、教材のデジタル化、そしてICTを活用した授業の開発など、新たな課題も浮上しています。

これらの課題に対応するためには、教員の研修や外部の支援者によるICT支援員の整備など、さらなる取り組みが必要です。


教育現場でICT化を進める目的

教育現場でICT化を進める目的としては、主に以下の3つが挙げられます。
・情報を収集・活用する力を身につける
・ITスキルやIT知識を身につける
・協働的な学びを実践する

このような、教育現場でICT化を進める目的を理解することは、効果的な教育改革を推進するために欠かせません。

また、ICT化の進展に伴う課題に対して、適切な対応策を講じるためのベースにもなるでしょう。


情報を収集・活用する力を身につける

児童や生徒たちが教室内で教科書だけを使って学ぶのではなく、インターネットなどを通じて様々な情報に触れ、それを活用する力を養うことが大切になってきています。

例えば、子どもたちがプロジェクト学習を行う際に、インターネットで最新の研究や多角的な情報を収集し、それをベースに議論を深めたり、新たな知見を得たりすることが挙げられます。

この過程で、子どもたちはただ情報を受け取るだけでなく、その情報の信頼性を判断したり、複数の情報源を比較検討したりすることで、メディアリテラシーも高められるでしょう。

つまり、ICTを活用して情報を収集しながら、それを自分の学びや問題解決に活かす力を身につけられます。


ITスキルやIT知識を身につける

情報技術が急速に進化し、社会のあらゆる面でICTの活用が求められる現代において、ITスキルやIT知識を身につけることは非常に重要です。

教育にICTを導入することで、児童や生徒たちは実践的な授業を通じて、コンピュータの基本操作からプログラミング、データ分析、デジタルメディアの利用方法など、幅広いITスキルを学ぶことができます。

例えば、プログラミング教育では単にコンピュータを操作する技術を教えるだけでなく、フローチャートやシステムの流れを理解しながら論理的思考力や問題解決能力、創造性を養うことを重視しています。

また、インターネットリサーチの授業では、情報の検索、評価、活用方法を学び、情報リテラシーを高めることができます。

こういったスキルと知識は、将来社会で生きていく上でとても役に立つことになるでしょう。


協働的な学びを実践する

教育現場でICT化が進むと、児童や生徒同士が互いに知識を共有し、教え合いながら学習する「協働的な学び」を実現させることができます。

例えば、オンラインプラットフォームを利用することで、生徒たちは時間や場所の制約を受けずに協力してプロジェクトに取り組むことが可能になります。また、デジタルツールを活用することで、生徒たちはリアルタイムで情報を共有し、協働で課題を解決することも可能です。

ICT化により協働的な学びの実践が日常的となれば、児童や生徒たちのチームワークや問題解決能力が飛躍的に向上するでしょう。

さらに、ICTを活用することで、遠隔地にいる専門家や他校の生徒との協働学習も可能になります。これにより、子どもたちは多様な視点から知識を得ることができ、グローバルな社会で活躍するためのスキルを身につけることができます。


教育にICTを導入するメリット

教育現場でICTを活用することで多くのメリットが得られます。以下はメリットの中でも代表的なものです。

・わかりやすい授業ができる
・クラス全員に目配りが利く
・個別最適な学びができる
・教員の事務作業を軽減できる
・授業と家庭学習を結びつけやすい

これらのメリットを理解しておくことで、より効果的にICTを活用することができます。

また、ICT導入に向けて関係者を説得する際にも、ICT導入のメリットを積極的に伝えるとよいでしょう。


わかりやすい授業ができる

ICTの活用により、映像やアニメーション、音声、Webサイトなどの多様な教材を、効果的に授業に取り入れることが可能になります。これにより、従来の文字による学習だけでは得られなかった視覚的な理解を深めることができ、より分かりやすい学習内容となります。

例えば、歴史の授業で重要な出来事をタイムライン上に映像で表示したり、理科の授業で実験の様子をアニメーションで見せたりすることができます。

これらの多角的なアプローチは、児童や生徒の興味関心を惹きつけ、学習意欲を向上させる効果があります。また、ICTを活用することで、一人ひとりの理解度に合わせた学習が可能になり、個別の学習支援にもつながります。


クラス全員に目配りが利く

ICTの活用により、教員は児童や生徒一人ひとりの理解度や進捗をリアルタイムで把握できるようになります。

例えば、タブレットやスマートデバイスを使用して、授業中に行う小テストやアンケートの結果を即座に集計し、全員の意見や理解度を確認できます。

これにより、大勢の前で発言することが苦手な児童や生徒でも、チャット機能などを通じて積極的に意見を共有したり、質問を投げかけたりすることが可能です。

さらに、学習管理システム(LMS)を利用することで、児童や生徒一人ひとりの学習履歴や進捗状況を詳細に追跡し、個々のニーズに合わせた指導や追加の学習資料を提供することができます。また、個別の学習支援や補助が必要な生徒に対しても、より適切なサポートができるようになります。

教育にICTを導入することで、教室内でのコミュニケーションが活発になり、児童や生徒全員が授業に参加しやすくなるとともに、教員がクラス全員に目配りし、一人ひとりの学習状況に合わせたサポートを行うことが容易になります。


個別最適な学びができる

ICTを活用することで、教員は一人ひとりの理解度やレベルに応じた出題や、特別な支援が必要な子どたちに対する指導やサポートを容易に実現できます。

そうなると、児童や生徒は自分のペースで学習を進めることができるため、さらに理解度が高まります。

個別最適な学びを実現するためには、児童や生徒一人ひとりが自分の能力を最大限に発揮できるようサポートすることが重要です。そうすることで、子どもたちの学習意欲や学習成果の向上が期待できるでしょう。


教員の事務作業を軽減できる

教育現場にICTを導入すれば、学校と家庭とのやりとりのデジタル化が進み、これまで紙ベースで行っていた連絡事項の配布や提出物の収集などが、オンラインで簡単に行えるようになります。その結果、教員の事務作業の負担が大幅に軽減され、より教育活動に時間を割くことが可能になります。

また、ICTツールを使って、出席管理や成績管理などの日常的な事務作業を、自動化することも可能です。

保護者とのコミュニケーションツールとして学校専用のアプリケーションを導入すれば、個別の連絡事項も迅速かつ正確に伝えることができるようになります。

さらに、授業資料の共有、課題の提出、フィードバックも、ICTを活用することで効率的に行うことが可能になるでしょう。


授業と家庭学習を結びつけやすい

児童や生徒たちがICTを活用できるようになれば、学校での授業内容を自宅で深めることが容易になり、自宅で調べたり考えたりすることも可能になります。

オンラインプラットフォームを通じて授業資料を共有すれば、子どもたちは家でも授業内容を復習したり、さらに理解を深めるための学習に取り組むことも可能です。

また、児童や生徒が自宅で行っている学習活動に対しても、教員がフィードバックをしやすくなります。オンラインで提出した課題に対して、教員がコメントや指導を加えることができるため、即時にフィードバックを受け取り、学習に活かすことができます。

このように、教育にICTを導入することで「学校での学習」と「家庭での学習」を密接に連携できるため、子どもたちの学習効果をより高めることができるでしょう。


教育のICT化は進んでいる?現状の課題

教育現場のICT化における課題は多岐にわたるため、具体的な問題点を明確にすることが、効果的な改善策を講じる第一歩となります。

教育のICT化における課題に対処することは、教育の質の向上にも直結します。

これらの課題を克服し、ICTを効果的に活用することで、学習成果の向上、教育機会の平等など、教育全体の質を高めることができるでしょう。

ここでは、現状の課題や問題点について解説します。


端末導入も自治体や学校での利活用に差が生じている

教育のICT化は、GIGAスクール構想の下で大きく進展していますが、現状では端末導入やその活用において自治体や学校間での格差が生じているという課題が浮き彫りになっています。

学校現場では「ネットワーク回線が遅い」「教職員端末が古い・未整備」といった課題が明らかになっており、これらの問題は教育の質に直接影響を及ぼす可能性があるでしょう。

【出典】文部科学省「GIGAスクール構想の実現へ

GIGAスクール構想の目的は、下記の通り、1人1台端末と高速ネットワークを整備することで、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、最適な学びを提供することにあります。しかし、端末の整備が進んだとしても、その活用方法や教育内容に格差があると、構想の本来の目的を達成することは難しくなります。

このような状況を改善するためには、全国的なレベルでの支援やガイドラインの提供、教職員の研修強化、インフラ整備の加速などが必要です。

また、教育のICT化を進める上で、児童や生徒、教職員だけでなく、保護者や地域社会との連携も重要となります。

<GIGAスクール構想の目的>
・ 1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育 環境を実現する
 ・これまでの我が国の教育実践と最先端の のベストミックスを図ることにより、教師・児童生 徒の力を最大限に引き出す


NEXT GIGAに向けた推進の動きも

教育のICT化における現状として、NEXT GIGAに向けた動きが活発になっていますが、端末導入やその利活用における課題も明らかになっています。

文部科学省では2023〜24年を集中推進期間と位置付け、学校現場や各地方自治体への伴走支援を徹底強化していく方針です。

具体的には、利活用の自治体間格差をはじめ、「研修体制が十分でない」「指導方法が分からない教員が多い」といった指導面や、「端末の故障が多い」「指導者用端末が整備されていない」といった整備面などの課題に対応するため、伴走支援の強化を図るとともに、端末更新にあたっては計画的に整備を進める予定です。

このように、NEXT GIGAに向けた推進の動きは、教育のICT化をさらに前進させるための重要なステップと言えるでしょう。


教育をICT化した取り組み事例

教育にICTを活用している事例を知ることは、教育の質を向上させ、より良い学習環境を提供するためにも重要なステップです。

現場教育での事例を参考にしながら、効果的なICTの活用方法を学ぶことで、教育の未来を形作るためのアイデアのヒントになるでしょう。

全国にはICTを活用している学校、多くの関係者を巻き込んで教育のICT化を進めている地域など、成功している事例はいくつもあります。

そこでここからは、実際の取り組み事例をいくつか紹介します。


愛知県春日井市

春日井市では、約20年前から教育の情報化に取り組み、ICTを活用して校務改善を実現してきました。特に、10年前からは出川小学校を先進校として、分かりやすい授業の実現とICTの日常的な有効活用に力を入れ、「かすがいスタンダード」として市内全校に展開しました。

この取り組みでは、教室環境を整え、ICT機器の気軽な使用を促し、教員が便利さに慣れることを重視しています。

職員への研修では、アプリの活用場面を増やし、日常業務からICTの利用を促進しており、活用紹介動画の作成や、出欠確認など校務でのICT活用を進め、教育現場でのICTの効果的な利用を推進しています。

これらの取り組みを通じて、春日井市ではGIGAスクール構想に基づく1人1台端末・クラウド環境の整備を進め、教育の質の向上を目指しています。

参考:春日井市「GIGAスクール環境活用事例集」


岡山県奈義町立奈義小学校

奈義町立奈義小学校では、1人1台の端末を用いた授業作りに力を入れており、校内研修を通じて教員の指導力向上に努めています。

ICT環境として、Windows端末、Google Workspace for Education Fundamentals、Office365、AIドリル、教材提示装置、デジタル教科書が整備されており、端末の扱い方や授業規律を全校で徹底し、ICT利用時のトラブルを減らし、効果的な活用を促しています。

また、児童が互いに助け合う文化が根付いており、学習の進行だけでなく人間関係の構築にも役立っています。

ICTを活用した授業改善に向けて校内研修に外部講師を招くだけでなく、教職員間の積極的な連携も非常に重要な役割を果たしています。

参考:岡山県「おかやまICT活用実践事例集」


秋田県立特別支援学校

特別支援教育においても、教科指導の効果向上や情報活用能力の育成、障害による学習や生活上の困難の改善・克服を目的として、iPad、デジタルホワイトボード、ロイロノートなどのデジタルツールやアプリが活用されています。

具体的な実践例としては、正確な歯磨き方法の学習、校内実習の充実、情報整理・共有・提示、イラストデザインの作成加工、お金の支払い方のイメージ化を目指した買い物学習、デジタル版絵本づくりなどです。

これらの活動は、学習の効果を高めるだけでなく、生徒の自立活動や協働学習を促進し、肯定的な自己評価や臨場感ある体験の提供にも貢献しています。

また、学校行事での役割自信向上のための視覚的手段としての学習支援アプリの活用や、書字に困難のある生徒のための学習支援アプリ、平仮名と片仮名の反復練習にWebアプリを活用する例、修学旅行内容の発表準備にiPadを使う例など、様々な場面でICTが有効に活用されています。

参考:秋田県立特別支援学校「ICT活用実践事例集」


まとめ:教育のICT化には学校・教員側の対策も必須

教育のICT化は、GIGAスクール構想の推進や新型コロナウイルスの影響により、その重要性がより増してきています。

教育現場でICT化を進める目的は、情報を収集・活用する力、ITスキルやIT知識の習得、協働的な学びの実践など、児童や生徒たちが将来「情報社会で生き抜く」ために必要なスキルを育成することです。

これらの目的を達成するためには、教育現場での適切なICT活用が不可欠ですが、端末導入やその利活用において自治体や学校間での格差が生じているなど、多くの課題が存在します。

また、教育においてICTを活用していくには、デジタル技術の導入だけでなく、教育現場での適切な対応と支援体制の構築が必須です。

教員の研修やカリキュラム開発、ICT活用の実践例の共有など、教育現場全体での取り組みがポイントになるでしょう。


【記事監修者】

補助金や許認可の手続きを専門とする行政書士事務所Link-Up代表北川哲也氏。

2011年に29歳で開業し7年間個人事務所として中小企業向け行政書士サービスを展開。2018年春に株式会社Link-Upを立ち上げ、士業サービスでカバーしきれないコンサルティングや顧問サービスをスタート。公益社団法人茅ヶ崎青年会議所の2021年度理事長や認定NPO法人NPOサポートちがさき参画など活動多数。


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