いまさら聞けない アクティブラーニングのメリットや各学校の事例など

いまさら聞けない
アクティブラーニングの
メリットや各学校の事例など


アクティブラーニングとは、児童、生徒、学生などが能動的に学習できるような仕組みを持つ学習方法です。2017年に文部科学省が公示した新学習指導要領で従来の受動的な学習から能動的な学習への変換が示されていることもあり、学校教育のあり方として注目を浴びています。


アクティブラーニングとは

アクティブラーニング(Active Learning)とは、ディスカッション、問題解決、ケーススタディ、ロールプレイ、その他の方法を通じて児童、生徒、学生などを積極的に参加させることを含む学習法です。元々はアメリカの高等教育の現場で1980年代から提唱され始め、90年代に学習論として発展したものです。

日本では、2012年に文部科学省が中央教育審議会で取りまとめた「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」に登場し、その後2014年の「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」でも問われることとなりました。

2016年の央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」に示されたように、「『アクティブラーニング』は子供たちの『主体的・対話的で深い学び』を実現するために共有すべき授業改善の視点としての位置付けを明確にすること」とされ、2020年の学習指導要領改訂にあたっては「主体的・対話的で深い学び」という表記に変わっています。

「主体的・対話的で深い学び」の実現については文部科学省が提示した「主体的・対話的で深い学びの実現(「アクティブ・ラーニング」の視点からの授業改善)について(イメージ)」が参考になります。


アクティブラーニングに活用される手法

アクティブラーニングを実際に授業に取り入れるための方法は数多くあります。その中のいくつかをご紹介します。


ラウンドロビン

数人のグループで順番に素早くアイデアを出していく方法です。
教師が出した課題に対し、決めておいた順番を元にどんどん発言していきますが、一方的に発言するだけで人の発言に口出しや評価をすることはできません。教師も同様です。


ピアレスポンス

レポートなどを発表する前のチェックをペアで行うものです。
自分のレポートを音読し、相手はそれを聞きながら確認していきます。
読み終えたら相手は改善点を伝えます。
次に相手のレポートを音読して同じことを行い、これらを数回繰り返します。


ジグソー

数人のグループ内で各人が学習する内容を決め、それぞれが別のグループへ移動して学習を進めます。
その後専門家として最初のグループに戻り、他メンバーに学習内容を教えます。


アクティブラーニングのメリット・デメリット

アクティブラーニングのメリットは、自主性、社会性、自己解決力を高めることと考えられます。
従来のような一方的に聞くだけの学習と比較して、アクティブラーニングでは自ら進んで学ぶ意欲が高まります。
また、仲間と協力して学習を進めることにより、コミュニケーション能力が必要となります。
課題を解決するための力も自然と身に付くでしょう。

一方アクティブラーニングを進める上でのデメリットは、主に指導者側に存在すると言ってよいかもしれません。学生などアクティブラーニングの指導を受ける側としてはメリットが勝るイメージですが、先生など指導者側から見るとデメリットを感じやすくなります。

例えば、教科書通りの内容であれば1コマにおさめやすいですが、様々な活動が入ってくると時間が不足してしまいます。
また、指導者の力量によって学習成果に偏りが生じるなど、体系化されていないこともアクティブラーニングを取り入れる際に難しいと思われる原因となっています。


アクティブラーニングの実践例

独立行政法人教職員支援機構では、小学校から高校までのアクティブラーニングの授業実践事例をまとめています。
そちらからいくつか実践例を挙げてみます。
大学に関しては2009年からの関西大学の取り組みをピックアップしました。


小学校でのアクティブラーニング事例

2017年廿日市市立大野西小学校1年生算数の授業では、「計算の仕方を見いだすことを通して、既習の内容と結びつけて考える力を育成したい」というテーマでアクティブラーニングが行われました。
こちらの実践例では1の位の足し算を単に行うのではなく、身近な題材から加法の場面を見出し、どのようにしたら計算できるかという方法から考えていく様子が報告されています。
話し合いながら答えを導き出すという過程や解法は一つではないという結果によって児童の理解が深まったと考えられます。

2016年岐阜大学教育学部附属小学校5年生音楽の授業では、「自ら創造的に音楽にかかわる力を育成したい」というテーマでアクティブラーニングが行われました。
世界の国から選んだ挨拶を旋律にするという取り組みに向け、様々な楽器を使って各国独自を表現する様子が報告されています。
音楽を聴くという慣れ親しんだ方法だけでなく、自ら音を並べて旋律を作っていくという主体性や相談しながら進めていく協調性、さらには発表時の表現力が養われたと考えられます。


中学校でのアクティブラーニング事例

2017年彦根市立中央中学校1年生国語の授業では、「集めた材料を分類・整理して、文章の構成を考える力を育成したい」というテーマでアクティブラーニングが行われました。
通常の国語の授業であれば、与えられた物語や説明文などの題材を元に登場人物や著者の思いを個々に探っていくことが中心になりますが、この授業では小学6年生にできるだけわかりやすい紹介をするという目的に向けた取り組みが中心となっています。
そのため、主体的に文章を書くことにつながりますし、皆で相談してよりよい表現方法を模索していくというチームでの作業も生じます。


高校でのアクティブラーニング事例

2017年不二聖心女子学院中学校・高等学校1年総合の授業では、「持続可能な社会のあり方について実感的に学んでほしい」というテーマでアクティブラーニングが行われました。
それまで地球温暖化防止のために適正な間伐の必要性を学んできた生徒が、木工作品アイディアコンテストをNPO法人と協力しながら行う様子が報告されています。
現実の問題をより身近なアイデアで解決するということは、成果が見えやすく、モチベーションの向上につながりますし、学校という枠を出た地域の方との協力が社会性をはぐくみます。


大学でのアクティブラーニング事例

関西大学では2009年~2011年の3年間にわたり、に自ら考え行動する「考動力」を育成する目的で「三者協働型アクティブ・ラーニングの展開」を行いました。
このアクティブラーニングの大きな特徴は、初年次学生の学習支援にLA(ラーニング・アシスタント)と呼ばれる学部学生がファシリテーターとして参加するということです。
結果として「LA活用クラスとそうでないクラスとでは受講生の授業評価にかなり有意差が見られることが分かる。」(参照:三者協働型アクティブ・ラーニングの展開 平成23年度成果報告書 199頁)という報告がなされており、学習成果が上がっていることがわかります。


今後のアクティブラーニング

日本でも様々な取り組みが行われてきたアクティブラーニングですが、学校教育の現場に浸透するにはまだまだ時間がかかりそうな印象です。

決められたことを決められた通りにやるのが学校の授業という考えが強く残っていることや、いざアクティブラーニングを導入しても評価の方法が定まらないというのが現在の課題と言えるでしょう。
自由な発想やアイデアを生み出す力となるアクティブラーニングは、日本の未来を担う重要な役割を持つことが考えられます。

今後もアクティブラーニングの継続した取り組みが期待されるところです。


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学校・教育機関、企業の人事・研修部門など教育に関わる方に向けた日本最大の展示会です。
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