不登校支援の取り組み ~国・自治体・民間施設・団体の事例~

不登校支援の取り組み
~国・自治体・民間施設・団体の事例~


不登校支援については時代とともにそのあり方が変容を遂げています。令和に入って出された「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」でもわかるように、文部科学省の見解も変化しています。現在不登校支援にはどのようなものがあるのか、公的なものから民間も含めてご紹介します。


不登校の現状

平成28年の公布から4年後の令和2年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小・中・高等学校等における不登校児童生徒数は239,178人となっており、年々増加していることが報告されています。
さらに、令和3年度の調査では小・中・高等学校等における不登校児童生徒数は295,925人と急増しています。

出典:「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」74頁|文部科学省

 

小・中学生不登校の要因としては、こちらの割合になっています。

出典:「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」4頁|文部科学省

 

ただし、不登校の児童生徒や保護者への調査を行った「令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要 - 文部科学省」によると、「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」(複数回答)は「先生のこと」(小学生30%、中学生28%)、「身体の不調」(小学生27%、中学生33%)、「生活リズムの乱れ」(小学生26%、中学生26%)、「友達のこと」(小学生25%、中学生26%)となっており、学校側との相違がみられます。


不登校支援の現状

現在の不登校支援の多くは、平成28年12月14日に公布された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」に基づいて行われています。

この法律には「国及び地方公共団体が講じ,又は講ずるよう努めるべき不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策,夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等に関する施策及び教育機会の確保等に関するその他の施策等について」が規定されています。

令和元年10月には「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」により、文部科学省から改めて不登校支援の基本的な考え方や取り組みが示されました。
この通知の中では、学校や教育委員会の取り組みを充実させるよう努めることに加え、民間施設との連携協力を深めていく旨も記されています。

これにより、従来のような学校と家庭の支援拡充にとどまらず、民間企業との連携が重要であるということを国や自治体が認めたと言えるでしょう。


不登校に対する国や自治体の支援体制

このような流れを受け、不登校支援施設・団体などを支援する動きも広まっています。現在国や自治体によって行われている不登校支援について主なものを挙げてみます。

教育支援センター

教育支援センターは、不登校児童生徒等に対する指導を行うために教育委員会などが学校の空き教室や学校外で、個別カウンセリング、集団での指導、教科指導等を行う場所とされています。
平成28年度の調査では教育支援センターが設置されている都道府県は約6割に過ぎませんでしたが、その後の取り組みにより増加していることが考えられます。

不登校児童生徒等を対象とする特別の教育課程の編成(特例校)

平成16年に閣議決定した「不登校児童生徒等を対象とした学校設置に係る教育課程弾力化事業」に基づき、平成17年の学校教育法施行規則改正により全国化した不登校児童生徒等を対象とする特別の教育課程の編成(特例校)があります。
この不登校特例校とは、不登校児童に配慮して作成された教育課程を実施している学校のことで、従来の学習指導要領に則していなくても認められる学校です。
令和4年のデータでは、全国に21校存在しています。
不登校特例校の一覧はこちらの「不登校特例校の設置者一覧|文部科学省」でご確認ください。

不登校児童生徒に対する支援推進事業

令和2年より、不登校児童生徒に対する支援推進事業を行う都道府県や政令指定都市に国や自治体から補助金が交付される取り組みが始まっています。
この事業で推進されている不登校支援体制としては、大きく分けて以下の2つです。

・不登校児童生徒支援に係る関係機関の連携体制の整備
・学校以外の場における不登校児童生徒の支援の推進

具体的には、以下が中心です。

・不登校児童生徒支援協議会等の設置
・コーディネーターの設置
・教職員研修会や保護者学習会等の実施
・教育支援センターにおける相談・支援体制の強化

これ以外にも関連施策として、スクールカウンセラー等活用事業・スクールソーシャルワーカー活用事業、学力向上を目的とした学校教育活動支援による支援スタッフの配置、不登校児童生徒への対応に取り組む私立学校への支援に対しても補助金が交付されています。


不登校支援の民間施設・団体

国では、不登校支援の「民間施設についてのガイドライン」を発行しています。このことを受け、近年民間でも不登校支援を行う企業や団体、個人などが増加しています。

フリースクール

フリースクールとは、日本ではもともと既存の学校の仕組みにとらわれず、誰もが自由に通える場所として民間団体が設立した施設です。
そのため、全国各地に規模から形態まで様々な施設が設立されており、企業に限らず個人事業としてもフリースクールを営んでいるケースがあります。
先の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」にも学校外の施設で教育を受けていれば出席日数に含まれる旨が記されていることから、現在不登校児童生徒がフリースクールに通う選択肢も広がっています。

学習塾や個別指導

不登校児童生徒の抱える学習課題を専門的に解決するために、勉強面のサポートを行う学習塾や家庭教師なども増えています。
通える距離に不登校対応の塾が無い場合でも、パソコンやタブレットを使ったオンライン指導を行っているケースもあります。
寄付をもとに無料運営を行っているNPO法人による「カタリバ オンライン不登校支援プログラム room-K」では、ひとりひとりにあった個別支援計画に基づき、学びの場やオンライン保護者会の場などを提供しています。

カウンセリング

不登校児童生徒やその保護者を対象とする民間のカウンセリング施設もあります。
多くが診断資格を持つカウンセラーですが、不登校という事情に配慮して自宅までの訪問やオンラインでカウンセリングを行うサービスを持つケースもあります。
学校だけでなく外に出ることができないといった場合には心身の不調が原因となっていることもあるため、専門家によるカウンセリングでサポートを行います。

保護者の会

不登校の児童生徒を持つ保護者が中心となって相談会や勉強会などを行うグループも全国各地に存在しています。居住地域に限らず参加できることも多く、近年はオンラインで開催するケースも増えています。


今後の不登校支援

このように不登校児童生徒の急増により、不登校支援は今後もますます需要が高まることが予想されます。
文部科学省も以前は不登校児童生徒を学校に戻すことを目的に支援を行っていましたが、令和に入ってからは先の通知でも周知のとおり『「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること』と変化しています。

国や自治体や学校も様々な支援策を打ち出しているものの、受け皿となる場所は不足しているのが現状です。
民間施設・団体が増えている現状はありますが、これらの施設や団体は必ずしも無料で支援を受けられるわけではなく、金銭的負担を考えると支援を受けたくても受けられないという児童生徒もいることは否定できません。

また、寄付などを募って無料で行われる支援の場合は人数を制限する必要もあるため、やはり誰もが受けられるというわけではないのが現状です。不登校児童生徒が学校という場所にとらわれずに平等に学習する機会を得るために、不登校支援のますますの拡充が期待されています。


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