GIGAスクールであらためて重要となる情報モラル教育


GIGAスクール構想により、全国の小学校、中学校に一人一台端末が配布されました。これから本格的な活用が進む中、すでに活用が進んでいる学校では新たな課題が見えてきました。

 

課題として挙げられるものとしては、「教員のICT活用指導力」「学校の学習指導での活用」「持ち帰り関連」が上位を占めています。また、1人1台端末環境での実践にある程度蓄積がある自治体では、それに次いで情報モラルの問題が挙げられるようになっています。

 

 

「(資料3-7-1)GIGAスクール構想に関する各種調査の結果について」(文部科学省) (https://www.mext.go.jp/content/20210827-mxt_jogai01-000017383_10.pdf)を加工して作成

情報モラルとは

学習指導要領では情報モラルを「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」と定めています。具体的には「他者への影響を考え、人権、知的財産権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもつこと」「危険回避など情報を正しく安全に利用できること」「コンピュータなどの情報機器の使用による健康とのかかわりを理解すること」が挙げられています。

出展:文部科学省 第5章 情報モラル教育(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249674.htm

 

このような情報モラルを教育すべき理由は、生徒一人ひとりの端末を先生が管理することはできないからです。使える機能を制限するという考えもありますが、それでは必要な情報を得られません。

そこで必要なのが「情報モラル教育」です。「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」を子ども達が身に着けることが大事なことではないでしょうか。


あらためて重要となる情報モラル教育の背景とは

「情報モラル教育」を行い、情報社会で適正な活動をする重要性については理解されている方が多いでしょう。では「情報モラル教育」があらためて重要視される理由として、どのような問題が子どもたちの間で起こっているのでしょうか。

ここでは代表的な3つの事例について紹介します。
 

・ネット依存・スマホ依存

スマートフォンやタブレットでSNSやゲーム、動画視聴に夢中になって、生活習慣や日常生活に影響を及ぼしています。

厚生労働省の調査で行われたスクリーニングテスト(8項目)では、もっと使いたいという過剰使用、インターネットやゲームをしたいという渇望、時間を減らせない制御不能の項目が高い傾向となっています。この調査は中高生ですが、小学生にも同じような傾向があると考えられます。また、

こういったことから、睡眠障害や情緒不安定、体力低下などの健康被害、不登校、成績不振、家族関係の悪化など社会問題も起こっています。

出典:飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究(https://www.med.tottori-u.ac.jp/files/45142.pdf

子どもたちにとってもスマートフォンは大切な連絡手段となっています。

取り上げるのではなく、自分で管理できるようにしていく必要があります。

 

・SNSいじめ

小学生・中学生にもスマートフォンが普及して以降、SNSによるいじめが大きな問題になっています。クラスのLINEグループなどによる仲間外れなどのいじめは外からは見えづらいため、学校や保護者が気づきにくいという問題があります。

こうしたいじめは、GIGAスクールで配布されたパソコンやタブレット端末からも行えます。実際に東京新聞が「小中学校に学習用のパソコンやタブレット端末を1人1台配布する政府の「GIGAスクール構想」を巡り、東京都内の少なくとも6区市で、端末を使って悪口を書き込むなどのいじめがあったことが、本紙が東京23区と多摩地域5市(八王子、立川、府中、調布、小平)の教育委員会に実施したアンケートで分かった」と報道しています。

出典:東京新聞2021年10月17日(https://www.tokyo-np.co.jp/article/137216

 

・その他SNSトラブル

SNSへの軽はずみな投稿での炎上、個人情報を知らない人へ教えたり、直接会うことでの詐欺被害も増えています。また、肖像権や著作権についてのトラブルも起きており、実際に2010年に14歳の中学生が著作権法違反で逮捕されています。この中学生はジャンプやサンデーの漫画を無断でYoutubeにアップしていました。逮捕された少年は「漫画が好きで,ユーチューブに発売前に投稿されている漫画を見ていた。自分もやってみようと思った。悪いこととは分かっていた」「やってみたら,反応が大きく気持ちが良かった。(投稿した作品を宣伝している)自分のブログもみてほしかった」「みんなが違法投稿しているなかで,まさか自分が捕まるとは思わなかった」などと供述したといいます。

出典:宮城県総合教育センターの資料より(http://www.edu-c.pref.miyagi.jp/midori/moral/jugyo-page/jugyo-file/d_j1-01/j101-04.pdf)。

「みんなやっているから大丈夫」「自分が逮捕されるわけがない」という意識を持っている子どもたちは多いはずです。こうした事例を子どもたちにも共有する必要性があるでしょう。


情報モラル教育のポイントとは

文部科学省のホームページによれば、身につけて欲しい情報モラルとして「情報社会の倫理」、「法の理解と遵守」、「安全への知恵」、「情報セキュリティ」、「公共的なネットワーク社会の構築」の5つの柱を提示しています。

それをさらに以下のように「心を磨く領域」と「知恵を磨く領域」にわけています。

「第5章 情報モラル教育」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249674.htm)を加工して作成

心を磨く領域では「情報社会における正しい判断や望ましい態度を育てること」が必要です。著作権の問題やLINEなどの仲間はずれ、掲示板への書き込みなどはこちらの領域になります。

特にLINEでの仲間外れや掲示板での誹謗中傷は、やっている本人たちにとっては軽い気持ちで行われています。しかし相手にとってはいじめられていると感じることが多いです。それが原因となり、大きな事件につながることもあります。こうしたSNSの使い方は情報モラル教育の重要な課題のひとつだと言えます。

知恵を磨く領域では「情報社会で安全に生活するための危険回避の理解やセキュリティの知識・技能、健康への意識」が必要になります。個人情報を簡単に教えてしまって、大きな事件に巻き込まれることも実際に起こっています。ツイッターなどのSNSは世界中の誰でも見られるものです。SNSでは個人情報を書き込まない、SNSで知り合った人に個人情報を教えないなど、知っておかなければなりません。

情報モラル教育は学校と家庭が連携して行っていくことが望ましいです。そのためにも子どもたちだけでなく、保護者のための情報モラル教育も必要になってくるでしょう。


子どもたちが自分で管理できるように学校と家庭で協力を

現代の情報化社会において、保護者の方や学校の先生が管理できる部分は限定的になっています。そのため子どもたちが自分で管理できるようになる必要があります。「LINEでこんなことを書いたら相手は傷つくかな」という想像力を身につけなければなりません。しかし、学校で教わったからすぐにできるようになるものでもありません。そこは学校と家庭で協力しながら、うまく子どもたちを導いていく必要があります。見えないところで大きな事件が起こってしまうのは非常に悲しいことです。学校と家庭の連携を強化して、情報モラル教育を行っていきましょう。

 

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